「PFAS」という言葉を、ニュースや業界誌で目にする機会が増えてきました。海外を中心に規制の動きが広がっており、国内でも食品包材分野での対応が徐々に求められはじめています。一方で、外食業界の現場では「自社のテイクアウト容器や耐油紙袋がどこまで影響を受けるのか」「いつまでに対応すればいいのか」がまだ明確に整理されていないケースも多いのではないでしょうか。

この記事では、PFASとはそもそも何で、なぜ規制対象になっているのかを整理したうえで、外食業界で使われる包材への影響と、PFASフリー素材へ切り替える際に押さえておきたい確認ポイントをまとめます。

PFASとは何か、なぜ規制対象になっているのか

まずは前提として、PFASがどのような物質群で、どういう理由で規制の対象になっているのかを整理します。

PFASの定義

PFAS(ピーファス/Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は、「有機フッ素化合物」と総称される人工的な化学物質群の総称です。1万種類以上の物質が含まれるとされ、撥水・撥油性、耐熱性、化学的安定性に優れていることから、20世紀後半から幅広い用途で利用されてきました。代表的な用途には、フライパンのコーティング、雨具、消火剤、半導体製造、そして食品包材があります。

食品包材で問題視される理由

食品包材の領域でPFASが用いられてきた典型例は、ハンバーガーや揚げ物のテイクアウト容器、耐油紙袋、紙製の食品トレーなどです。これらの紙製品に油や水が染み出さないように、紙の表面にPFAS系の薬剤を塗布または含侵させて耐油性能を持たせていました。

PFASが規制対象として注目されるようになった主な理由は、次のように整理できます。

  • 環境中で分解されにくい:自然環境中で長期間残留することから「Forever Chemicals(永遠の化学物質)」とも呼ばれます
  • 生体内に蓄積する性質:水や食品を通じて人体に取り込まれやすく、体内に蓄積するとされています
  • 健康影響の懸念:一部のPFASについて、健康影響との関連が国際的に議論されています

これらの背景から、欧米を中心に食品接触材料(食品が直接触れる包材)でのPFAS使用に対する規制強化が進められています。

国内外のPFAS規制動向(2026年時点の整理)

PFAS規制の動きは、国・地域ごとに進度が異なります。2026年時点で外食業界の担当者が押さえておきたい主要な動向を整理します。

海外の動向

米国では、複数の州が独自に食品包材へのPFAS使用を制限する法律を施行しており、紙製の食品接触材料についてはPFAS使用を実質的に禁止する州が増えています。特にカリフォルニア州・ニューヨーク州など規制先進州では、一定規模の事業者への適用が始まっています。

EUでも、PFASを物質群として包括的に規制する方向で議論が進められており、食品包材を含む幅広い分野での使用制限が段階的に強化される見通しです。グローバルに展開する外食チェーンや食品メーカーは、こうした海外動向を見据えて、ブランド共通仕様での包材切替を進めるケースも出てきています。

国内の動向

国内では、PFAS全体に対する規制はまだ段階的な検討フェーズにあり、すべての食品包材で即座に使用禁止になっているわけではありません。一方で、特定のPFOS・PFOA・PFHxSといった代表物質については、化学物質審査規制法(化審法)に基づく製造・輸入禁止や使用制限が進められています。

PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)の対象物質にも一部のPFASが追加されており、製造・取扱事業者には情報管理の負担が増えています。また、消費者意識の高まりに伴い、取引先チェーンから「PFAS不使用証明を提出してほしい」という要請を受けるサプライヤーも増えつつある段階です。今後の規制強化を見越して、外食・中食事業者の中にも、社内の包材調達基準にPFASフリーを盛り込む動きが広がりつつあります。

PFAS規制と外食業界への影響まとめ

主要な論点を表で整理すると、自社で何をいつまでに検討するかを判断しやすくなります。

観点 主な内容 外食業界への影響
規制強化の地域 米国(州レベル)、EU、国際機関 グローバル展開チェーンは早期対応が現実的
規制対象品目 食品接触材料(耐油紙袋、紙容器、紙トレーなど) テイクアウト・デリバリー業態は影響が大きい
国内の状況 一部物質の製造・使用制限、PRTR対象拡大 取引先要請・社内基準でのPFASフリー導入が進む
切替候補素材 フッ素フリーの耐油紙、バイオマス由来素材、特殊ラミネート 印刷・耐油性能・コストの再評価が必要
ブランドへの影響 サステナビリティ評価、消費者・取引先の意識変化 「環境配慮包材」を訴求材料にできる側面もある

国内の規制は海外に比べてまだ限定的ですが、取引先からの要請・輸出入対応・消費者意識の変化という三方向から、対応の必要性は着実に高まっています。「規制が確定してから動く」より、段階的な準備を今から進めておく方が、スケジュール・コスト両面でリスクを小さく抑えられます。

包材を切り替える際に確認したい4つのポイント

PFASフリーへの切替は「素材を変えるだけ」では完結しません。実際の業務で問題なく使える包材を選ぶためには、複数の観点を組み合わせて評価する必要があります。

① 用途に応じた代替素材の選定

ハンバーガー包装紙、フライ用バッグ、テイクアウト容器など、用途ごとに必要な耐油・耐水・耐熱性能が異なります。PFASフリー素材にはバイオマス由来コーティング・特殊抄造紙・新型樹脂ラミネートなど複数の選択肢があり、用途ごとに適した素材を組み合わせる発想が必要です。一括で全品目を切り替えようとせず、影響の大きい品目から優先して評価する進め方が現実的です。

② 耐油・耐熱性能の実使用テスト

カタログスペック上は基準を満たしていても、実際の店舗で「揚げたての商品を入れた状態」「保温庫に長時間入れた状態」では性能が変わることがあります。本格採用の前に、実際の商品・調理環境に合わせた使用テストを行い、油染みや破れが起きないかを必ず確認しましょう。テストには一定の期間が必要なため、余裕をもったスケジュール設定が重要です。

③ 印刷・ロット・納期の対応

包材はブランドロゴや商品情報の印刷を伴うことが多く、素材を変えると印刷適性も変わります。発注ロットの最低数量や、納期、印刷方式(オフセット・フレキソなど)が現行運用と整合するかを早めに確認しておくことが、切替プロジェクトの遅延を防ぐ鍵になります。既存の包材サプライヤーがPFASフリー素材に対応しているかも、あわせて確認しましょう。

④ 検査体制と「不検出証明」の有無

サプライヤーがPFAS不検出を証明できる試験成績書を提供できるかは、切替の最終判断材料になります。第三者試験機関による分析証明があるか、どの物質群を対象に検査しているか(PFOSのみか、PFAS全般か)を確認しましょう。グローバルブランドや取引先から要請がある場合、証明書の範囲・更新頻度・書式まで事前に確認しておくことが重要です。

まとめ:PFAS対応は「あとで考える」から「いま準備する」フェーズへ

PFAS規制は、外食業界にとって遠い海外の話題ではなく、自社の包材選定基準そのものを見直すべきテーマになっています。完全な切替を一気に進める必要はありませんが、次のような段階的なアプローチが現実的です。

  1. 現状把握:現行の包材品目の中で、PFAS系素材が使われている可能性が高い品目をリストアップする
  2. 優先評価:テイクアウト・デリバリー向けなど、食品が直接触れる品目から代替素材の評価を始める
  3. 試験・承認:実使用テストと不検出証明の取得を経て、本格切替の判断を行う

「影響の大きい品目から段階的に検討を始めること」が、規制強化や取引先要求への対応余力を確保しやすくする現実的な道筋といえます。

ひかり産業は、長年の食品包材オーダーメイド製造の実績を活かし、PFASフリー対応の耐油紙袋や食品向け包装資材の企画・製造に取り組んでいます。包材の切替を検討中の方は、用途や数量に合わせた素材提案からご相談いただけます。