外食チェーンの本部で物流や仕入れを担当していると、「冷凍便・チルド便・常温便がバラバラに届いて、店舗の検品に時間がかかる」「ドライバー不足で各業者の到着時刻が読めず、欠品や温度トラブルが起きる」といった声を、現場から日々受け取っているのではないでしょうか。配送の便数が増えるほど、店舗オペレーションの負荷は積み上がっていきます。
この記事では、外食チェーンの食材物流を一本化する有力な選択肢である「3温度帯同時配送」について、仕組み・メリット・導入前に押さえるべき確認ポイントを整理します。複数業者・複数便での配送に課題を感じている本部担当者が、自社の物流体制を見直す判断材料として使える内容を目指しました。
3温度帯同時配送とは何か
3温度帯同時配送とは、冷凍(おおむね −18℃以下)・チルド(0〜10℃)・常温(10〜25℃)の3つの温度帯の食材を、1台のトラックに同時に積載して配送する仕組みを指します。トラックの荷室を温度ごとに断熱仕切りで区画し、それぞれを独立した温度管理下で運ぶことで、温度帯の異なる食材を1便で届けられる物流スタイルです。
外食チェーンが扱う食材は、冷凍の業務用食材から、チルドの生鮮・乳製品、常温の調味料・乾物まで多岐にわたります。従来は温度帯ごとに別々の業者・別々の便で店舗へ届くケースが多く、店舗側は1日に何度も荷受けと検品をこなす必要がありました。3温度帯同時配送は、この「便の分断」を1便に集約することで、店舗オペレーションの負担を構造的に軽くする手段として、近年の外食チェーン本部で導入検討が進んでいます。
なお、3温度帯対応のトラックには専用の冷凍・冷蔵設備と断熱仕切り設備が必要なため、一般的な単温度帯配送車よりも設備投資とオペレーション管理の高度化が求められます。その分、対応できる物流会社は限られており、自社の品目・地域・店舗数に対応できるかを早期に見極めることが大切です。
外食チェーン本部が抱える「複数便受け入れ」の3つの負担
物流効率化の議論に入る前に、複数業者・複数便のまま運用したときに何が起きているかを整理しておきます。
1. 検品工数が積み上がる
温度帯ごとに別便が来ると、店舗スタッフは便ごとに納品書の突き合わせ・欠品確認・温度確認を行う必要があります。1日3〜4便の受け入れがある店舗では、ピーク時間帯と荷受けが重なり、ホール・キッチン業務に支障が出るケースも珍しくありません。検品にかかる時間は人件費に直結するため、目に見えにくいコストとして本部の利益を圧迫する傾向があります。
2. 温度管理の事故リスクが残る
便の到着時刻がそろわない場合、先に届いたチルド・冷凍食材を一時的に常温で待機させる時間が発生することがあります。短時間でも本来の温度帯から外れた食材は、品質低下や食品衛生上のリスクにつながりかねません。複数便構成では、こうしたリスクが日常的に潜在しやすいのが実情です。
3. 物流2024年問題によるリードタイム伸長
2024年4月から始まったトラックドライバーの労働時間規制(いわゆる物流2024年問題)以降、配送業界全体でリードタイムが伸び、便数の維持が難しくなる傾向があります。複数業者と個別に契約している場合、ある業者の便が確保できなくなれば、その温度帯の食材だけ供給が滞るリスクを抱えることになります。
比較表:複数業者・複数便 vs 3温度帯同時配送
両者を主な評価軸で比較すると、次のように整理できます。
| 評価項目 | 複数業者・複数便 | 3温度帯同時配送 |
|---|---|---|
| 1日の納品便数 | 温度帯×業者の数だけ発生 | 原則1便に集約 |
| 検品作業 | 便ごとに発生 | まとめて1回 |
| 温度管理 | 業者ごとの管理水準に依存 | 1社の責任範囲で一貫管理 |
| 欠品時の連絡先 | 業者ごとに個別対応 | 窓口が一本化 |
| 物流2024年問題への耐性 | 業者ごとに影響を受ける | 拠点・車両の最適化で吸収しやすい |
| 発注業務 | 業者ごとに個別発注 | 一元発注(WEB発注システムと相性が良い) |
| コスト見通し | 便数増加に比例して上昇しやすい | スケールメリットにより単価を安定させやすい |
3温度帯同時配送の本質的な価値は、便がまとまることそのものよりも、店舗オペレーションと本部発注業務の両方の標準化が進む点にあります。検品手順や発注ルールが1系統に整うことで、新規出店時の立ち上げや、人員交代時の引き継ぎも軽くなる傾向があります。
導入前にチェックすべき4つのポイント
3温度帯同時配送への切り替えは効果が大きい一方で、自社の事業特性に合うかを見極めることが欠かせません。導入検討の段階では、次の4点を必ず確認することをおすすめします。
① 配送頻度・ロットが自店舗に合うか
1便集約の前提として、配送頻度(週何便か)と1便あたりのロットが、自社のオペレーションに合致するかを確認します。冷凍主体の店舗と生鮮主体の店舗では最適頻度が異なるため、業態別に試算が必要です。また、1便あたりのロットが小さすぎると集約のメリットが薄れるため、現行の発注量をまとめて提示できるよう事前に整理しておきましょう。
② 全国カバー率と拠点ネットワーク
多店舗展開している場合、地方・離島出店のカバー範囲が重要になります。北海道から沖縄まで複数の物流拠点を持つ事業者であれば、全国均一の配送品質を実現しやすい傾向があります。出店計画と照らして、拠点配置と翌日配送の対応エリアを確認しておきましょう。
③ WEB発注システムとの連動
3温度帯同時配送のメリットを最大化するには、発注業務側も一元化することが鍵になります。WEB発注システムを介して在庫・欠品・配送状況をリアルタイムに把握できる体制があると、店舗と本部のあいだの電話・FAXによる連絡業務が大きく減ります。システム連携の仕様や、既存の基幹システムとの互換性も確認しておきたいポイントです。
④ 緊急時の代替フロー
1社・1便への集約は、効率化と引き換えに、その1便が止まったときの影響範囲が広がる側面もあります。災害・事故時の代替配送ルート、緊急発注への対応有無を、契約前に必ず確認しておくことが望まれます。BCPの観点から、複数拠点体制を持っているかどうかも判断材料になります。
まとめ:「便の分断」を解消し、物流を構造から整える
3温度帯同時配送は、外食チェーンの食材物流を「便の分断」から「便の集約」へと組み替える、構造的な効率化手段です。検品工数の削減・温度管理の一貫化・物流2024年問題への耐性向上という3つの効果を同時に得やすく、特に20〜300店舗規模で店舗オペレーションのばらつきに課題を感じている本部にとっては、検討する価値の高い選択肢といえます。
物流体制の見直しは、食材の調達構造・発注システム・在庫設計と一体で考えると、より大きな改善効果が見込めます。「まず自社の配送便数と検品工数を整理してみる」ところから着手されることをおすすめします。
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