「仕入れ価格が毎年上がっているのに、メニュー価格への転嫁には限界がある」「ドライバー不足で配送リードタイムが延びて、欠品が起きやすくなった」「本部スタッフが足りず、発注管理に追われて価格交渉に手が回らない」——2026年に入っても、外食チェーン本部の仕入れ・物流担当者が抱える悩みは複合化を続けています。
外食産業を取り巻く環境変化は、単一の出来事ではなく、複数の構造的トレンドが重なり合って進んでいます。この記事では、2026年時点で押さえておきたい仕入れ環境を、食材高騰・物流2024年問題・人手不足の3つの視点から整理し、本部担当者が次に検討したい対応策の方向性をまとめます。
食材高騰の現在地:止まらない原材料費上昇
帝国データバンクが2025年に実施した飲食店向けの調査では、回答した飲食店の94.6%が「仕入れ価格が上昇している」と回答しています。数年前から続くこの傾向は、2026年時点でも緩和の兆しは見えにくく、外食産業全体として「食材コストが下がらない前提」での経営が定着しつつあります。
特に影響が大きいとされるのは、以下のようなカテゴリです。
- 小麦・油脂類:国際相場と為替の影響を受けやすく、円安局面では仕入価格が押し上げられる傾向
- 乳製品・加工肉:飼料価格・エネルギー価格の上昇が原料費に転嫁されやすい
- 水産物:気候変動による漁獲量の変動と、海外需要の拡大が国内仕入価格を押し上げる傾向
- 業務用調味料・包材:原料・物流コストの上昇分が緩やかに反映され続けている
メニュー価格への転嫁は一部で進んでいるものの、競合チェーンとの価格競争があるため、すべての上昇分を売価に反映できているケースは多くありません。「単価交渉」だけでなく、「調達構造そのものの見直し」を視野に入れる必要が高まっています。
物流2024年問題の影響:リードタイム・配送頻度・コスト
2024年4月から適用されたトラックドライバーの労働時間規制(時間外労働の上限規制)は、外食チェーンの食材物流にも影響を及ぼしています。1人のドライバーが1日に走れる距離・時間が短くなった結果、長距離配送を中心にリードタイムの延長や運賃の上昇が起きやすくなっています。
物流現場で実際に観測されている主な変化は、おおむね次のような傾向としてまとめられます。
- 翌日配送が翌々日配送になる地域・品目が一部で発生
- 配送頻度が「週3回 → 週2回」のように削減されるケースがある
- 中継地点の増加によって運賃が上がり、メーカー側も値上げを通告する例が増えている
- ドライバー確保のため、配送時間帯を昼夜で固定する事業者が増加し、受け取り時間の自由度が下がる
これらは外食チェーンにとって、欠品リスクの増加・在庫日数の増加・物流費の上昇という三重苦として現れます。配送便を仕入先ごとに細かく分けている事業者ほど、この影響を正面から受ける構造になっており、配送網の見直しが急務になっています。
人手不足:本部・物流・店舗の三方向で進行
帝国データバンクの2025年人手不足調査では、非正社員の人手不足を感じる企業は飲食店で61.8%、正社員でも55.9%が不足感を抱えていると報告されています。これは全業種の中でも上位の水準です。
外食産業における人手不足は、店舗だけの問題ではありません。
- 店舗:ホール・キッチンの慢性的な人材不足、採用コストの上昇
- 物流:トラックドライバー・倉庫作業員の高齢化と新規就業者の減少
- 本部:仕入れ・経理・経営企画など、専門人材の採用難
本部スタッフが不足している現場では、仕入れ・物流の管理業務が一部の担当者に集中し、価格交渉や新商品の探索といった「本来やるべき付加価値業務」に時間が回らないという悪循環が起きやすくなります。
3つの環境変化を横並びで整理する
食材高騰・物流2024年問題・人手不足を横並びで見ることで、対応の優先順位を整理しやすくなります。
| 環境変化 | 主な要因 | 外食チェーンへの影響 | 本部に求められる対応の方向性 |
|---|---|---|---|
| 食材高騰 | 為替・国際相場・気候変動・エネルギー価格上昇 | 原価率の悪化、売価転嫁の限界 | 調達構造の見直し、スケールメリットの活用 |
| 物流2024年問題 | ドライバー労働時間規制、運賃上昇、中継コスト増 | リードタイム延長、欠品リスク増、物流費上昇 | 配送便の集約、3温度帯同時配送の検討、在庫設計の見直し |
| 人手不足 | 人口減少、採用競合の激化、ドライバー高齢化 | 店舗運営負荷増、本部業務集中、教育コスト上昇 | 受発注DX、業務自動化(RPA等)、アウトソース |
重要なのは、これらが独立した課題ではなく、相互に影響し合っている点です。例えば「人手不足で発注ミスが増える → 欠品が起き → 急遽仕入れ先を分散させる → 物流費がさらに増える」というように、一つの問題が次の問題を呼び込む構造になっています。個別の課題への対処だけでなく、調達・物流・人員を俯瞰した構造的な対応が不可欠です。
本部が取れる対応策の方向性
短期的な単価交渉だけでは追いつかない以上、構造的な打ち手を組み合わせていく必要があります。本部担当者が検討に値する方向性として、次の3つが挙げられます。
1. 調達の集約と「束ねる力」の活用
仕入先を複数社に分散させていると、価格交渉力(スケールメリット)が分散し、単価が高止まりするケースが少なくありません。複数品目を1社に集約することで取引規模を大きくし、交渉余地を確保しやすくする方向性が、コスト圧縮の起点になります。
食材・包材・消耗品を一元化することで、管理工数の削減と価格交渉力の向上を同時に実現できる可能性があります。「まず何品目を集約できるか」を棚卸しするところから着手できます。
2. 配送網の見直しと3温度帯同時配送
仕入先と配送網が連動している場合、調達の集約と同時に配送便も集約できます。冷凍・チルド・常温を1台にまとめて届けてもらう「3温度帯同時配送」に対応した事業者を選ぶことで、物流2024年問題による物流費上昇の影響を相対的に小さく抑えられる可能性があります。また、受け取り便数が減ることで店舗の検品工数も削減できます。
3. 受発注業務のDXと業務アウトソース
WEB発注システムの導入や、本部の発注・帳票業務を外部にアウトソースすることで、人手不足時代でも限られた担当者が本来やるべき付加価値業務に集中できる体制を整えやすくなります。RPAなどによる定型業務の自動化も、検討の選択肢に入る段階に来ています。発注・在庫確認・請求照合といった定型業務を自動化することで、担当者が本来注力すべき業務に充てる時間を確保しやすくなります。
まとめ:個別最適から「調達構造の再設計」へ
2026年の外食産業を取り巻く仕入れ環境は、食材高騰・物流2024年問題・人手不足が同時並行で進行する、複合課題の時代に入っています。それぞれの課題を個別に対処するのではなく、調達・物流・人員の三層を俯瞰して構造そのものを再設計することが、原価率改善と現場負担軽減を両立させる近道になります。
「いまの仕入れ体制を変えるにしても、どこから手を付けるべきか」——その整理から支援できることも、仕入れ・物流のパートナーが担う役割のひとつです。
ひかり産業は、外食チェーン向けに食材・包材・消耗品の一括調達と全国配送を一社でまとめて担うサービスを提供しています。仕入れ・物流・業務効率化を一体で見直したい方は、お気軽にご相談ください。


