多店舗を展開する外食店で、「同じレシピのはずなのに、店舗によって味が少し違う」「ベテランが抜けると味が落ちる」といった声が出ていないでしょうか。とくにスープや割り下、かけつゆ、煮物のだしなど「だし」が味の土台になる業態では、仕込む人やその日の状態によって仕上がりが動きやすく、味のばらつきがクレームや再来店率に響く傾向があります。

だしのばらつきは、売上や原価のように数字で見えにくいぶん、対策が後回しになりがちです。しかし、クレーム対応や店舗への再教育にかかる時間、炊き直したスープの廃棄まで含めると、見えないコストは決して小さくありません。この記事では、外食チェーンやラーメン事業者が「だしの味を揃えながら、仕込みの負担も減らす」ために押さえておきたい考え方を、業務用の白だしを使う場合の例とあわせて整理します。

なぜ店舗が増えると「だしの味」がぶれるのか

だしは、材料の量・水の量・火加減・抽出時間・こし方といった複数の工程が積み重なって仕上がります。工程が多いということは、それだけ人による差が入り込む余地が大きいということです。店舗数が少ないうちは、本部や中心メンバーが味を見て回れるため、ぶれても早く戻せます。しかし店舗が20、50と増えると、次のような形でばらつきが固定化していきます。

各店舗が「自店のやり方」に少しずつ寄っていく

現場では、その日の食材や気候に合わせた微調整が日常的に行われます。一つひとつは良かれと思っての判断ですが、本部のチェックが届かないと、調整の積み重ねが基準から離れた「自店の味」として定着していきます。

経験による補正が効かなくなる

仕込みを担うメンバーがパート・アルバイト中心になると、「少し薄いから伸ばす」「今日は濃く出たから調整する」といった経験にもとづく補正が難しくなります。レシピどおりに作っても、素材のロットや抽出条件のわずかな違いが、そのまま仕上がりに出やすくなります。

繁忙期に仕込み工程が削られる

人手が足りない時間帯には、抽出時間を短くする、こしを省くといった「削り方」が現場判断で入ります。これも味ブレの典型的な原因です。

だしを標準化する3つのアプローチ

だしの味を揃える方法は、大きく次の3つに整理できます。自社の店舗数・立地・仕込み設備・人員体制に応じて、組み合わせて考えます。

アプローチ 内容 向いているケース
レシピと手順の固定 分量・時間・道具を数値で決め、写真や動画でマニュアル化する 中心となるだしが1〜2種類で、仕込み設備が各店にある
セントラルキッチンでの一括仕込み 拠点でまとめて炊き、冷蔵・冷凍で各店へ配送する 店舗が一定エリアに集まっており、配送網がある
完成度の高い調味料の活用 だしのベースを既製の業務用調味料に置き換え、店舗での工程を減らす 店舗が広域に分散、または仕込み人員を確保しにくい

1つ目と2つ目は「工程を管理して差を小さくする」方向、3つ目は「工程そのものを減らす」方向です。人手不足の影響を受けにくいのは3つ目で、近年は化学調味料に頼らず、素材の一次原料からつくり込んだ業務用調味料も増えており、「時短と味の両立」を狙いやすくなっています。

置き換えは「影響の小さいところ」から検証する

いきなり主力メニューのだしを全面的に置き換えると、味の変化がお客様に伝わりやすく、リスクが高くなります。まずは、まかない・期間限定メニュー・サイドメニューなど影響範囲の小さいところで試作し、既存の味とどれだけ近いか、オペレーションがどれだけ楽になるかを確認してから、段階的に広げるのが安全です。

コスト比較は「原材料費」だけで見ない

だしを調味料に置き換えると、1食あたりの原材料費は上がることが多くあります。しかし、仕込みにかかる人件費、光熱費、だしがら等の廃棄、味ブレによる炊き直しロスまで含めて比較すると、総コストでは近い水準に収まるケースもあります。比較のものさしを原材料費だけにしないことが、判断を誤らないポイントです。

数字で見る「仕込み時間」の重さ

かりに、1店舗あたり毎日30分をだしの仕込みに使っているとします。50店舗なら1日25時間、月あたりでは約750時間です。時給1,200円で換算すると、月90万円前後の人件費が「だしの仕込み」だけに使われている計算になります。

項目 計算 目安
1店舗の1日あたり仕込み時間 30分 —
50店舗・1日合計 30分 × 50店舗 25時間
50店舗・1ヶ月合計 25時間 × 30日 約750時間
人件費換算(時給1,200円) 750時間 × 1,200円 約90万円/月

※上記はモデルケースであり、実際の数値は業態・メニュー・地域によって異なります。

仕込み工程を半分に減らせれば、単純計算で月45万円分の時間が生まれます。その時間を接客や品質チェック、新メニュー開発といった「人にしかできない仕事」へ振り向けられるかどうかが、多店舗展開の質を左右します。

業務用の「だしベース」を選ぶときに見るポイント

だしを既製品に置き換える場合、価格だけで決めると現場で使われなくなることがあります。次の点を試作時に確認しておくと、導入後のミスマッチを減らせます。

確認項目 見るポイント
味の方向性 既存メニューのだしと系統が近いか。加える量で濃度を調整しやすいか
原材料表示 化学調味料の使用有無、アレルゲン、原料原産地。メニュー表示や説明に使えるか
容量・荷姿 店舗の使用ペースに合う容量か。開栓後の保存性、保管スペースは足りるか
供給の安定性 継続的に同じ規格で仕入れられるか。欠品時の代替はあるか
使い方の幅 1品専用か、複数メニューに展開できるか。まかないや新メニューにも使えるか

とくに「供給の安定性」は多店舗では重要です。味を統一したあとで仕入れが途切れると、全店で味が動くことになります。仕入れ窓口を一本化し、在庫と配送をまとめて管理できる体制とセットで考えると安心です。

まとめ:味を揃える仕組みを、早い段階で決めておく

だしの味ブレは、店舗が増えてから対策しようとすると、各店に定着したやり方を戻す手間がかかります。レシピの固定、セントラルキッチン、調味料の活用という選択肢を、出店計画と合わせて早い段階で検討しておくことをおすすめします。判断にあたっては、原材料費だけでなく仕込み時間・廃棄・再教育まで含めた「総コスト」で比較することが大切です。

ひかり産業では、外食チェーンの仕入れ・物流のワンストップ支援を通じて、食材や調味料の選定から、複数店舗への安定供給までをまとめてご相談いただけます。「味の標準化に使えそうな業務用の調味料を探している」「仕込みの負担を減らしたい」という段階でも、お気軽にお声がけください。

らー麺店で使われていた業務用の白だしを商品化した「焼きあご白だし」(焼きあごのたかはし)については、ご案内ページをご用意しています。ホタテの貝柱と有機白醤油を使い、化学調味料は不使用です。