人が採れない。採用しても定着しない。人件費は上がり続ける——。飲食業、小売業、宿泊業をはじめとするサービス業では、深刻な人手不足と採用難が経営課題になっています。
かつては、人手が足りなければ求人を出し、採用で補うのが一般的でした。しかし、少子高齢化による働き手の減少、最低賃金の上昇、業種をまたいだ人材の取り合いなどによって、その方法だけでは対応が難しい時代を迎えています。
この記事で注目したいのは、単なる人員削減や省人化ではありません。「これまで当たり前だった業務を、これからも続ける必要があるのか」。その問いから始まる、経営そのものの見直しです。最新の倒産データで現状を確かめたうえで、効率化の限界と、見直すべき「当たり前」を順に整理します。
人手不足は、もはや一時的な問題ではない
東京商工リサーチが2026年10月5日に発表した調査によると、2026年度上半期(4〜9月)の「人手不足」関連倒産は240件でした。調査を始めた2013年以降、年度上半期としては過去最多です。そのうち「人件費高騰」を要因とする倒産は130件(前年同期比75.6%増)で、全体の半数を超えています。
また、同社が2026年10月8日に発表した調査では、2026年度上半期の「飲食業」の倒産は514件(前年同期比3.4%増)となり、1997年以降の30年間で最多を更新しました。
| 項目(2026年度上半期・4〜9月) | 件数 | ポイント |
|---|---|---|
| 「人手不足」関連倒産 | 240件 | 2013年以降の年度上半期で過去最多 |
| うち「人件費高騰」が要因 | 130件 | 前年同期比75.6%増。全体の半数超 |
| 「飲食業」の倒産 | 514件 | 前年同期比3.4%増。1997年以降の30年間で最多 |
※出典:東京商工リサーチ(2026年10月5日・10月8日発表)
人が採れないことだけでなく、人材を確保するための賃上げが経営を圧迫する——という新たな問題も表に出てきています。サービス業の採用難は、もはや人事部門だけの課題ではありません。営業時間、サービス内容、商品構成、店舗運営、物流、そして事業の収益構造にまで影響する経営課題になっています。
効率化はどこまで可能なのか
人手不足への対応として、近年急速に進んでいるのが、DX(デジタル技術を使った業務の変革)や省人化、自動化です。
飲食店ではセルフオーダー、モバイルオーダー、セルフレジ、配膳ロボットなどが広がり、小売業でも自動発注、在庫管理システム、無人決済などの導入が進んでいます。さらに、生成AIを使った問い合わせ対応、シフト作成、需要予測など、これまで人が行ってきた業務の一部を技術で補う取り組みも増えています。
しかし、ここで考えなければならないことがあります。「効率化は、どこまで進めればよいのか」という問いです。
効率化が目的になると、失うものがある
効率化そのものが目的になってしまうと、本来大切にすべき顧客満足度やサービス品質を損なうおそれがあります。サービス業には、人にしかできない仕事が確かに存在します。お客様の気持ちをくみ取る接客、細やかな気配り、臨機応変な対応。それらまで一律に削ることが、必ずしも競争力につながるとは限りません。
「人を減らす」から「人が価値を生む仕事に集中する」へ
重要なのは、人を減らすことではなく、人が本来価値を生み出す仕事に集中できる環境をつくることではないでしょうか。設備やシステムは、そのための手段の一つとして位置づけるのが現実的です。
本当に見直すべきは「これまでの当たり前」
効率化を進めるうえで、最新の設備やシステムの導入以上に重要なことがあります。それは、既存の業務や仕組みを根本から見直すことです。
例えば飲食店であれば、次のような問いが考えられます。
- メニュー数を減らすことで、仕込みや在庫管理の負担を軽くできないか
- 営業時間を見直すことで、限られた人員をより効率的に配置できないか
- 調理工程を簡素化し、セントラルキッチンや半加工食材を活用できないか
小売業やほかのサービス業でも、発注業務、納品回数、在庫管理、取引先とのやり取りなど、長年続けてきた業務に改善の余地が残されているケースは少なくありません。
これまで続けてきたから。お客様が求めていると思うから。昔からこの方法だから——。こうした理由だけで維持されている仕組みは、本当にいまの経営環境に合っているのでしょうか。変化を恐れず、必要なものと見直すべきものを見極めること。それが、採用難の時代に求められる経営判断だと考えます。
物流・調達・資材の見直しも、人手不足対策になる
人手不足対策というと、店舗スタッフや接客業務に目が向きがちです。しかし、店舗運営を支えるバックヤードにも多くの改善余地があります。食品や包装資材の発注、納品への対応、検品、保管、棚卸し、在庫の補充など、日常的に行われている業務は決して少なくありません。
| 見直しの対象 | 考えられる取り組み | 期待できること | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 納品の受け方 | 複数の仕入先からの納品を集約する | 荷受け・検品の回数を減らせる | 配送頻度が下がり、在庫が増えすぎないか |
| 包装資材・消耗品 | 店舗ごとに違う資材を共通化する | 発注・在庫管理の負担を軽くできる | 店舗やメニューでの使い勝手が落ちないか |
| 発注業務 | 発注のデジタル化、適正在庫の管理 | 発注にかかる時間とミスを減らせる | 現場が無理なく使える仕組みか |
| 配送頻度 | 配送の回数・時間帯を最適化する | 受け入れ作業の時間を減らせる | 欠品や鮮度への影響がないか |
例えば、冷凍・チルド・常温の商品が別々のトラックで届いていれば、そのたびに荷受けと検品の手が止まります。まとめて届く仕組みに変えれば、その時間を接客や調理に回せる可能性があります(参考:3温度帯同時配送とは?)。
食品包材や物流は、単なるコストではなく、店舗の生産性を左右する重要な経営要素でもあります。ただし、納品回数を減らした結果、在庫が増えすぎたり、資材を共通化した結果、使い勝手が悪くなったりしては意味がありません。一つの業務だけを見るのではなく、調達・物流・在庫・店舗作業を含めた全体の最適を考えることが大切です。
変化を恐れない企業が、これからのサービス業をつくる
人手不足が深刻になるなか、これまでと同じ人数、同じ営業時間、同じサービス内容を維持することが難しくなる企業も増えていくと考えられます。だからこそ、すべてをこれまで通りに維持することだけが正解とは限りません。
場合によっては、営業時間を短くする。メニューやサービスを絞り込む。業務を外部へ委託する。取引先や物流の体制を組み直す。デジタル技術やAIを活用する。そうした選択が、結果として従業員の負担を軽くし、サービス品質の維持や収益性の改善につながることもあります。
もちろん、変化にはリスクが伴います。しかし、変化しないことにも同じようにリスクがあります。人が足りないから採用する——それだけでなく、人が足りなくても続けられる仕組みを考える。この発想の転換こそ、これからのサービス業に必要なのではないでしょうか。
よくある質問
Q. サービス業で採用難が深刻になっている理由は何ですか。
少子高齢化による働き手の減少、賃金水準の上昇、業種をまたいだ採用競争、勤務時間や労働条件の問題などが重なって影響しているとされています。
Q. 飲食店の人手不足を和らげる方法はありますか。
セルフオーダーの導入、調理工程の見直し、メニューの絞り込み、発注業務のデジタル化、セントラルキッチンの活用などが考えられます。店舗の規模や業態に合わせて選ぶことが大切です。
Q. DXやAIの導入だけで、人手不足は解消できますか。
すべてを解消できるわけではありません。業務そのものの見直しや、従業員の働きやすさ、サービス品質との両立が必要です。
Q. 物流や資材調達の見直しも、人手不足対策になりますか。
なりえます。納品回数の最適化、発注業務の集約、包装資材の共通化、在庫管理の効率化などによって、店舗の間接業務を減らせる可能性があります。
Q. これからのサービス業が重視すべきことは何ですか。
採用の強化だけでなく、業務の必要性を見直し、限られた人数で続けられる仕組みをつくることです。効率化と顧客満足度の両立が重要になります。
ひかり産業は、食品・外食企業を取り巻く環境の変化を、食品流通、包装資材、物流、調達の視点から捉えています。人手不足、採用難、人件費の高騰、物価上昇——企業が直面する課題は、一つの対策だけで解決できるものではありません。仕入れ窓口の一本化や3温度帯の同時配送、発注・支払い業務の代行など、仕入れ・物流・業務効率化のワンストップサービスを通じて、「人を増やすこと」だけに頼らず「人が活躍できる仕組み」づくりをお手伝いしています。「荷受けや発注の手間を減らしたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
